神経の異常を正常化させることが目標です
皆様にはペインクリニックはあまりなじみのない科名ですが「痛みの診療所」と考えていただければよろしいと思います。普通、お腹が痛い時は内科を受診し、耳が痛ければ耳鼻科、目が見えにくくなったら眼科に行って治療を受けるでしょう。治療の結果、健康を取り戻し痛みがなくなってしまえば、ペインクリニックが必要になることはありません。では、なんでこんな科があるのでしょう?
痛みには「症状としての痛み」と「痛みそのものが病気」の2種類があるのです。今までの医療は痛みを引き起こす病気ばかり目を取られ「痛み」に対してはあまり適切な処置がとられていなかった現実がありました。その上、帯状疱疹後神経痛のような痛みだけが症状の病気があることも次第にわかってきました。そこで一部の先駆者が中心となって発展させてきたのが、ペインクリニックという痛みを治療する専門分野なのです。
人が痛みを感じるのは神経があるからであり、その神経が故障しているから痛みを認識するのです。神経にはいくつか種類があります。脳や脊髄などの中枢神経、自分の意志では動かせない交感神経、副交感神経からなる自律神経、筋肉を動かす運動神経、感覚、温度などを伝える知覚神経、どの神経の動きが悪くなっても痛みを感じるのです。これらの神経の異常を正常化させるのがペインクリニックの目標です。
神経ブロックはペインクリニックで最も行われている専門治療です。ペインクリニックを行っている外来は普通「麻酔科」という科名を出している病院がほとんどです。麻酔科は手術の麻酔をするだけではなく神経ブロックの専門家でもあるのです。神経ブロックは局所麻酔薬と呼ばれる薬を注射針を用いて、調子の悪い神経を治療する方法です。この神経ブロックを主体に薬物療法、手術療法、リハビリ、カウンセリングなど色々な手段を用いて総合的に治療するのがペインクリニックなのです。
ブロック注射とは
ブロック注射を主体に色々な手段を用いて、総合的に治療します
ブロックとは止める(遮断する)という意味です。痛みを伝えている神経に、直接又は近傍に局所麻酔薬を注射し痛みの伝達を遮断する治療法です。痛みがあると血流低下がおきており、さらに神経の修復が悪くなるという悪循環が起こります。この「痛みの悪循環」を遮断し、元々の病態を改善するのが神経ブロック注射治療の一番の目的です。
例えば痛みの種類によって次のように使い分けます。
腰痛や下半身の痛み、しびれ
⇒ 仙骨・腰部硬膜外ブロック、神経根ブロック
頭痛、首、腕の痛み
⇒ 後頭神経・肩甲上神経ブロック、腕神経叢ブロック
背中から腰に掛けての痛み
⇒ 傍脊椎神経ブロック
背中から腰に掛けての痛み
⇒ 傍脊椎神経ブロック
筋肉や筋膜(ファシア)由来の痛み
⇒ ファシアリリース
これら以外にも様々な注射があり、総合して「ブロック注射」と呼ばれています。また当院では超音波診断装置を使ってブロック注射を行っています。超音波診断装置を使うことで痛みの原因となっている場所を確認しながら注射することができます。さらに注射の針も確認できますので、より正確で安全性の高い効果的なブロック注射をすることが可能となります。
このブロック注射を主体に、薬物療法、リハビリなど色々な手段を用いて、総合的に治療するのがペインクリニックなのです。