首から肩、腕の痛み
首から肩の痛み(首こりや肩こり)、腕の痛みはつらい症状です。これらの原因には様々なものが考えられます。『椎間板ヘルニア』や『変形性脊椎症』、さらには脊髄そのものに圧迫が及んだ『頚髄症』などは、身体の構造上の変化(器質的変化)によって起こる代表的なものです。『緊張型頭痛』や『更年期障害』は、身体の構造上の変化を伴わない(機能的変化)代表的診断名です。診察した医師が、検査所見や症状から何に重点を置いて診断するかによって『肩こり』という症状が『椎間板ヘルニア』という診断になったりすることもあります。
ただし、『頚髄症』や『椎間板ヘルニア』という診断が疑われた場合は、これらは脊髄が圧迫を受けているという判断に基づく診断名ですので、何によって圧迫を受けているのかをMRIやCTによって明らかにしておく必要があります。
肩こりの治療は各科によって様々ですが、ペインクリニックでは痛み止めの薬を処方する他に、超音波診断装置(エコー)を用いた神経ブロックやFascia(ファシア=神経・筋肉・血管・周辺組織など)リリースなどの注射を行っています。
多くの病気は器質的変化(Fasciaの変化)に機能的変化(筋肉の緊張や血管の収縮、自律神経の緊張など)が加わって現在の症状となっています。先述の注射によってこの機能的変化の部分を緩和し、痛んだ神経や筋肉の緊張を和らげて血流を改善して症状を軽減させます。
また、当院ではリハビリテーション部を開設しており、理学療法士や作業療法士が担当しております。痛みがなかなか良くならない場合や、早く良くなりたい場合はリハビリテーションを早期に導入し、機能的変化の部分をより改善することを目標とします。
肩の痛みの治療
平均寿命が80歳を超えた現代においては「五十肩」は、中年以降であればいつでも発症しえます。多くは原因に心当たりがありません。最初はじくじくした痛みから始まります。痛いために、長期間動かさないでいると、次第に関節は凍り付いて動かない「凍結肩」といわれる状態になり、動かせる範囲がせばまり、着衣、脱衣がスムーズにできなくなります。また床に入っても痛みのため、熟眠できず日常生活に及ぼす影響が大きくなります。
しかし「肩が痛む病気」イコール「五十肩」というわけではありません。昔は肩が痛ければ五十肩といっていましたが、これは原因がわからなかったために、つけられていた側面もありました。今日、診断技術の向上によって痛みの原因がわかるようになってきました。例えば、肩の深い所にある筋肉にキズがついたり、切れたりする「腱板断裂」、肩の筋肉に石灰が析出する「石灰性腱炎」、腕の力こぶの腱の炎症である「上腕二頭筋長頭腱炎」、骨の変形による「変形性肩関節症」、「関節リウマチ」などが代表的な肩の病気です。それ以外にも首の骨が原因であったり、時には心筋梗塞、肺がんで肩が痛むこともあります。
超音波診断装置の治療への応用
当院では以前より、お注射による「神経ブロック治療」を用いていましたが、超音波診断装置を導入してからは関節内や筋肉、腱の調子のわるい部位を画面で診断・確認しながら正確に針を進める方法を取り入れ効果をあげています。適切にお薬が入れば数分以内に痛みの軽減が見られることも稀ではありません。
肩の痛みはつらいものです、お困りの方は一度、超音波診断装置を用いた検査、治療を受けられてはいかがでしょうか。
また超音波診断装置を使った治療は、膝の病気、テニス肘(スマホ肘)、各種腱鞘炎、首の骨が原因の神経痛などにも適応が徐々に広げられ高い効果をあげています。
痛みがなかなか良くならない場合には、MRI検査やCT検査による精密検査を行い、詳しく調べることが必要です。