当院は「痛みの診断と治療」を専門とする病院です。

帯状疱疹

 体の片側にびりびり、チクチクした痛みが出てきて、気がつくと皮膚に赤み、ぶつぶつができて、その後「水ぶくれ」となるのが帯状疱疹です。
 帯状疱疹は子供の頃かかった「水ぼうそうのウイルス(水痘・帯状疱疹ウイルス)」によるものです。一度水ぼうそうにかかると、ウイルスは主に神経の根本に潜んで残ります。過労やストレスなど免疫力が低下した場合にウイルスが復活して、潜んでいた神経を伝わって皮膚に出てきます。このため、「皮膚の症状(水ぶくれ)」とウイルスの通り道となった「神経の痛み」の両方が出現します。
 帯状疱疹は通常、水ぶくれが出現する前(1日~数日前)に痛みやピリピリした症状が出ます(これを前駆症状といいます)。当院を受診された患者さんの中には、「肩の痛みで整形外科を受診して特に異常はないと言われたが、その後から水ぶくれが出てきた」という方や、「頭痛で脳外科を受診して特に異常はないと言われたけれども、その後、頭に水ぶくれが出てきた」という方もいらっしゃいます。もちろん、痛みがすべて帯状疱疹の前駆症状ではありませんが、水ぶくれが出現したときに帯状疱疹と気づくことになります。

診断

 診断はほぼ診察でわかりますが、見た目のみで診断が難しい場合には、迅速抗原検査キットを用いて診断します。これは水ぶくれをこすることによって調べる検査キットで、通常5~10分程度で陽性・陰性の判定ができます。
 帯状疱疹はどの場所にも出ますが、上肢~胸背部が約30%、腹~背部が約20%程度と上半身に出ることが多いです。顔に出てしまうと痛みが強い上に、顔面神経麻痺が生じることがあり、これをラムゼイ・ハント症候群と呼びます。 目の周りにでたものは「眼部帯状疱疹」と呼ばれ、発症の早い段階から結膜炎や角膜炎などが起こることもあり、眼科の受診が必要となる場合があります。いずれにしても早期の診断、治療が大切です。


治療

 治療はウイルスの増殖を抑える抗ウイルス薬の内服や点滴を行います。なるべく早期に抗ウイルス薬を使うことが大切です。また、痛みを伴う場合がほとんどなので、消炎鎮痛薬などの内服薬を併用します。


神経ブロック

 当院では帯状疱疹発症の早期から神経ブロック治療を併用し、帯状疱疹による痛みの緩和を目指しています。発症した場所に応じた神経ブロックを行っています。神経ブロックでは超音波装置(エコー)やX線透視装置を用いることで、より正確に目的の神経へのブロック注射を行うことを心がけています。
 早期に治療を行わないと、帯状疱疹後神経痛といって、皮膚がきれいに治っても痛みだけが残る場合があります。内服薬の処方でも痛みが強い場合は、1ヶ月以内に神経ブロックなどの治療を積極的に行わないと帯状疱疹後神経痛に移行する確率が非常に高くなるとされています。


帯状疱疹後神経痛

帯状疱疹後にかかった方の約10~30%が帯状疱疹後神経痛を発症するとされています。年齢が高いと帯状疱疹後神経痛になりやすいとされ、他には早い段階での強い痛みや皮膚感覚の低下が強い場合、また広い範囲に帯状疱疹が出現した場合などは帯状疱疹後神経痛になりやすいとされています。当院では電流知覚閾値測定を行い、感覚低下の重症度を調べています。
帯状疱疹後神経痛では主に内服薬が治療の中心となりますが、時期によっては神経ブロックが有効な場合がありますので、帯状疱疹後神経痛でお悩みの方は当院へご相談下さい。


帯状疱疹の予防接種(ワクチン接種)

 帯状疱疹の予防としては、免疫力の低下が帯状疱疹の出現につながることから、日頃からの体調管理が大切です。50歳以上の方については、帯状疱疹の予防接種(ワクチン接種)が有効とされています。ワクチン接種により帯状疱疹の発症予防や、発症してしまった場合でも重症化や帯状疱疹後神経痛の予防につながることがわかっています。
 現在、帯状疱疹ワクチンには生ワクチン・不活化ワクチンの2種類あり、当院ではこれらのワクチン接種を行っています。また、50歳以上の方でも、接種ができない方や注意が必要な方もいますので、帯状疱疹ワクチン接種をお考えの方は当院までご相談ください。