顔面神経麻痺とペインクリニック
ある日突然、含んだ水がこぼれてしまう、目が閉じない、笑うと顔が曲がるなどの症状で始まるのが顔面麻痺です。原因はウイルス感染、中耳炎、神経の腫瘍、などもありますが原因不明のものが多くを占めます。単に氷枕で冷やしたり、奥歯を抜いた刺激で起こった例も経験しています。
治療はステロイドホルモンや血液循環改善剤、ビタミン剤などの投与が行われます。脳腫瘍や中耳炎などの原因が明らかな場合には原因疾患の治療が最優先されます。顔面神経領域に出る帯状疱疹(水ぼうそうのウイルス)によって起こる麻痺(ハント症侯群)がありますが、ごく初期から抗ウイルス剤を併用します。
上記治療に加えてペインクリニックでは星状神経節ブロックの施行で、麻痺した神経の血流を改善し神経の回復を促します。
三叉神経痛
三叉神経は顔の感覚を担う脳の神経で、額・ほほ・あごに至る3本の枝の神経で構成されます。症状は会話・食事などの刺激で顔や口腔内に鋭く激しい発作痛が走るのが特徴です。
原因の多くは血管による圧迫ですが、まれにこの部位の腫瘍の場合もあるので、脳のMRI検査による確認が必要です。
治療は内服薬による治療をまず行い、多くの場合で効果が得られますが、中には徐々に効果が無くなったり、眠気や肝機能障害などの副作用が出る方もいます。
内服薬で効果が得られない人や副作用で薬が飲めなくなってしまった人には、当院では三叉神経末梢枝ブロックを行っています。超音波診断装置を用いて神経が出てくる穴を見つけてそこにブロック注射をします。さらに当院では高周波熱凝固治療器を導入しており、より強い効果が期待できます。痛みが残っている場合には、神経の根本を遮断する三叉神経節ブロック(ガッセル神経節ブロック)を行いますが、深いところに注射するので入院が必要となります。
根本的治療としては脳外科的な血管移行術があり、近年は成績も向上しています。また放射線(ガンマナイフ)も有効です。ご希望の方は手術可能な施設を紹介いたします。
眼瞼けいれん・顔面けいれん
目の周りが無意識のにぴくつく経験は誰しもありますが、多くは疲れによるもので数日で治ります。しかし中には治らず悪化する方もいます。
眼瞼けいれんは両目が無意識に閉じてしまう病気で、症状が悪化すると運転中に起こると事故のリスクもあります。原因は不明ですが40~70歳代の女性に多く、現在はボツリヌストキシン治療が主流です。
顔面けいれんは眼瞼けいれんも中高年に多く、眼周囲の筋のけいれんではじまり、口角まで広がります。片側だけに出るのが特徴で、顔のゆがみから対人関係に悩む方も少なくありません。原因は脳内で顔面神経と血管が接触するためです。治療は、手術で圧迫を取り除く治療法がありますが、開頭手術による合併症や再発のリスクもあります。そのため現在はボツリヌストキシンを注射する治療が一般的です。
痙性斜頸
自分の意志に反して首や肩まわりの筋肉が収縮し、頭や首が不自然な方向に曲がってしまう病気です。 原因は脳内の姿勢維持システムの障害と考えられていますが詳細については不明です。不自然な姿勢が続くため痛みが生じ、精神的な苦痛も伴います。 頚椎牽引や整体などで無理に姿勢を戻そうすると重症化してしまうことがあるので注意が必要です。
治療はボツリヌストキシンの注射を用いつつ、当院ではリハビリテーションを併用して筋肉の収縮や痛みを和らげています。
ボツリヌストキシンによる治療
ボツリヌス菌の毒素を医療用に安全化した薬剤で筋肉を緩める作用があります。この治療は許可を受けた施設だけが行うことができます。十分な問診と同意のもと、予約制の外来治療として実施します。
方法は、けいれん部位に細い針で薬を注射します。痛みも少なく短時間で終了し、当日から入浴も可能です。当院では、痙性斜頸に対し、筋電図検査で異常な筋肉を特定し、超音波(エコー)で確認しながら正確に注射を行います。効果は2~3日で現れ、3ヶ月から半年持続しますが、時間がたつと再発しますが再注射すれば症状はまたおさまります。従来の治療に比べ、苦痛の少なく有効性の高い治療法です。