三叉神経痛
三叉神経は主に顔の知覚と下顎の動きに関与する、頭蓋骨の出口で三本の枝に分かれて出る神経です。三叉神経痛の症状は顔面・頭部・口腔内などに、接触刺激や会話・食事によって、鋭く短い発作性の激しい痛みを感じるものです。 特に会話や表情の変化など顔の動きによって激しい痛み発作が誘発される場合には、患者さんは一切話すことを止めてしまい、表情を殺してしまいますので、鬱病やパーキンソン病と間違われることがあります。 さらに食事が取れないために、脱水や栄養障害になってしまうこともまれではありません。
原因はこの神経が脳に入るところで、血管に押されて障害を受けているものがほとんどです。まれにこの部位の脳腫瘍が原因の場合もあります。
治療は以下の4種類が代表的なものです。
① 薬物療法
② 神経ブロック療法
③ ガンマナイフ治療
④ 手術療法
治療は原因と患者さんの年齢や体力、希望に応じて選択されます。どの治療法にも利点、欠点がありますので、医師との十分な話し合いの上決定されます。
治療は薬物療法より始めます。カルバマゼピンが第一選択薬です。その他に漢方薬を併用する場合もあります。
ペインクリニックでは内服薬でコントロールできない痛みには三叉神経ブロックを行います。 これは痛みの引き金となる接触刺激を伝える神経を薬品で化学的に変化させ、発作を起きなくさせる治療法です。 当院では早くから高周波熱凝固治療器を導入し、三叉神経痛をさらに安全に治療しております。
帯状疱疹
からだの一定の部位がズキズキと痛みだし、前後して赤い水ぶくれがポツポツと出現し、時に一面にベッタリと広がる、これが帯状疱疹の典型的な発症パターンです。 顔面や頭頚部や腕に出た場合は時に顔面まひや手のまひを伴うこともあります。帯状疱疹はもともと子供の頃に患った水ぼうそうのウイルスが脊髄に潜んでいて、体の抵抗力が衰えたときに再び暴れ出して発症します。 帯状疱疹は単に皮膚の病気として片付けることのできない側面をもっているので注意が必要です。
ペインクリニックでの治療は抗ウイルス薬の投与と、発症部位に応じた知覚神経ブロック(三叉神経ブロック、神経根ブロック、硬膜外ブロック)や交感神経ブロックを行い、神経と皮膚のダメージを最小限に抑えそして回復を促すことが基本です。 さらに弱った体力を回復させるため、休養、安静も必要です。
最近はプレガバリンやオピオイドといった新しいタイプの帯状疱疹のお薬が発売になっているのでその専門的な処方も必要になります。
顔面神経麻痺
ある日突然、含んだ水がこぼれてしまう、目が閉じない、笑うと顔が曲るなどの症状で始まるのが顔面神経麻痺です。原因は主に顔面の筋肉を動かす顔面神経がウイルス感染(帯状疱疹ウイルスによるものは特にハント症候群といいます)、中耳炎などの炎症の波及や、神経の腫瘍、側頭骨や耳下腺腫瘍などによる圧迫で障害を受けるために起ります。 実際は原因不明のものが多く、単に氷枕で冷やしたり、奥歯を抜いた刺激で起った例もあります。
随伴する症状として、味覚が鈍くなったり、音が強く響いたり、目が乾くなどがあります。
痛みの診断と治療が専門であるペインクリニックとどう関係するのかと、疑問に思われる方も多いことと思います。 故田中角栄元首相が顔面麻痺になったときに、多忙な政治活動の中、ほぼ連日、64回にわたって受けた治療が星状神経節ブロックです。 併用療法として、ステロイドホルモンや血液循環改善剤、ビタミン剤、抗ウイルス剤を使用します。
舌咽神経痛
食事の時に飲み込み動作をしたときに、左右どちらかの耳の周囲や奥、のどの奥に痛みが出る病気です。 三叉神経痛と同様にカルバマゼピンが有効です。治療は食事や飲水ができませんので点滴による栄養と水分の補給が優先されます。 のどの奥の粘膜を表面麻酔することによって発作を抑えることが可能な場合がほとんどですから、食事の前に局所麻酔薬をスプレーすることで食事や飲水が可能になります。三叉神経痛と異なり2から3週間で自然に発作は治まることが多いのでこの間、入院して脱水の予防と栄養の改善につとめます。
蓄膿症の痛み
耳鼻科領域の病気で顔の痛みを訴えて来院される患者さんも多くいます。 特に副鼻腔炎(蓄膿症)では、目や鼻の奥、上あご、頭痛など病変のある部位によって、重苦しい痛みであったり激痛発作であったりジンジンという拍動性の痛みであったり痛みの性質は様々です。 副鼻腔は両頬の骨の中にある上顎洞、眉の上の頭蓋骨にある前頭洞、眉間の奥の篩骨洞、さらに奥の蝶形骨洞がありますが、篩骨洞や蝶形骨洞の炎症によって起る副鼻腔炎は片頭痛のような激しい痛みを起す場合があります。 消炎鎮痛薬と抗菌剤を二週間ほど継続して服用すると改善する場合が多いです。眼瞼けいれん
眼瞼けいれんは、両側の目の筋肉が無意識に閉じてしまう病気で、症状が悪化すると目が完全に閉じ前を見ることができない状態になってしまいます。 車の運転中に眼瞼けいれんが起こり、前の車に追突してしまった患者さんもいます。 原因は不明ですが、40~70歳代の中高齢者で多く女性に多いのが特徴です。 初期症状は、なかなか治らないドライアイや、光がまぶしいなどの眼科の症状で発症することが多い病気なのでこれらの症状にお悩みの方は注意が必要です。顔面けいれん
顔面けいれんは眼瞼けいれんと同様、中高年齢層に発症し、初期は片側の眼周囲筋のけいれんではじまり、病状の進行とともに口角のけいれんを伴うようになります。 症状が強くなると顔がゆがむぐらいに変形してしまい人前に出るのがいやになってしまうほどです。この疾患の原因は頭の中で、顔を動かす神経である顔面神経と脳の血管が接触するためといわれています。 治療は、この病気の原因が脳の血管と神経が接触しておこるということから、血管による神経の圧迫を手術で取り除く治療法があります。 有効率は高いですが、頭を開けて手術しなくてはならないために入院が必要なのと、顔面神経の麻痺や聴力障害などの大きな合併症が起こることもあります。
現在は眼瞼けいれん同様ボツリヌストキシン(ボトックス)を用いる治療が主流です。